坂井:Sakai 2019

 

 

“ Mr. Head ”

 

 

10. 19 ( Sat. ) ー 11. 9 ( Sat. )

 

 

 

 

 

 

 

坂井淑恵の作品では「人」と「水」が大きなテーマとなっています。坂井の作品において「人」とは、自身の感情や他者との関係性を意味し、「水」は人を取り巻く状況や環境、または個人の立ち位置から垣間見る空間・景色のようなものを表現していると言ってよいでしょう。

 

この度の個展は、和歌山県立近代美術館でこの夏開催された「なつやすみの美術館9 水と美術 feat. 坂井淑恵」と、そこで展示された坂井作品のみを個展として展示する太地町立石垣記念館の「おでかけ美術館 第1回 坂井淑恵展 「水の中」」に合わせて企画致しました。太地町立石垣記念館とは同時期開催となります。和歌山県立近代美術館の所蔵作品の中から水にまつわる作品を選定し、合わせて坂井淑恵の過去から新作までの大作を案内役として併置したこの度の展覧会は、坂井淑恵のミニ回顧展の様な内容でもあります。それは1990年代より、常に日本の現代美術界の中で変わらずクオリティの高い絵画を発表し続けてきた評価の現れとも言えるでしょう。日本のニューペインティングの旗手として90年代に頭角を現した坂井は、まるで子どもが描く様な純粋な人物像や水を取り巻く風景画を発表して人々を驚かせました。単純明快な構成ながらその人物たちはユーモアと哀愁を併せ持ち、見る人のこころに素直にしみ込んで来る様な優しさを秘めていました。それは風景画も同じです。色彩においても、様々な色が混色しながらも濁る事無く鮮やかで深みのあるグラデーションを見せています。その事は、坂井のテクニックの確かさ有っての事と言えるでしょう。和歌山県立近代美術館の展示において自己の大作を改めて総観する機会を得た事は、坂井にとっても意義深い事であったと思います。その体験が、今新たな第一歩を踏み出そうとしています。